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2011年08月17日

『今の世界が終わる前に』

どうもはじめまして、晴居彗星です。
名前と顔だけでもおぼえて帰ってください。
まあ、はじめましてと言ってもね、
こうしてぼくの話を聴いてくださっているみなさんを見ると、
見知った顔とか、ぼくのこと知ってる人とか、いると思うんですけど、
それでもやっぱりね、厳密に言えば、はじめましてと言うのが正解だと思います。

なにしろ、ぼくらの住んでるこの世界がはじまって、まだ5分しかたってないわけで、
まあ、全然そんな気しないわけですけど、
自分の記憶や世界の歴史ごと5分前にできましたから、そりゃしょうがないわけで。
過去なんてそんなもんですからね。
記憶と記録があれば、実際にあったことになっちゃいますから。
恐竜は最初から化石だし、古文書は最初から古文書だし、
死んだ人は最初から死んでるし。
ぼくも、最初から、25歳のさえない男として、
世界やみなさんといっしょに、5分前にはじまったわけですけど。

まあ、ぶっちゃけ、世界がはじまったのが100億年前だろうが5分前だろうが、
あんま影響ないっちゃないんですけどね。
ただ、なんていうんですかね、なんだったのかなーっていうのは感じますよね。
ぼくだってこの25年間、いろんなことがあったような気がするんですけど、
それが全部、たった5分前にできた記憶だと思うと、うーんって感じです。
設定にも多少文句もありますしね。あの、ビジュアルとか、
全体的にもね、この何ヶ月か、いろいろなことが起こって、
できたばかりなのに、なんだか世界の終わりみたいな世界です。

あのー、世界の終わりといえば、
小さいころ、といっても、ぼくの記憶も5分前に作られたわけですけど、
小学生のとき、休みの日、友達と自転車で遊びに出かけたんですね。
親にはあんまり外に出るなって言われてた時期だったんですけど、
なにしろ、遊びざかりだったもんで。
当時よく遊んでたのは、川の向こうのとなり町にある廃工場で、
人気もほとんどないところで、
まあ、そのころって、もともとあんまり人は出歩いてなかったんですけど、
あたりは昼間なのに薄暗くて、敷地の中に入ると雑草だらけで、
打ち捨てられたドラム缶とか、錆びたパイプがいっぱい転がってるようなところで。
その日も、みんなで適当に、動かないベルトコンベアのボタン押しまくったりとか、
よくわかんないアームのついた装置の上に乗っかったりとかして遊んでたんですけど、
そのうち、工場の中でかくれんぼしようぜって話になったんですね。
そいで、じゃんけんして、みんなでかくれたわけですよ。
で、ぼくは、2階の、なんかいっぱい部屋があったんですけど、一番奥の部屋、
中に入ると、応接テーブルと、机とイスと大きな窓、なんか社長室っぽいところで、
ぼく、その机の中にかくれたんですね。
それでぼく、待っているあいだに、ウトウトしちゃったんです。

目がさめたのは、ズシンっていう、大きな振動のせいでした。
軽い地震かなと思って、ハッと目をさますと、
ちょうどぼくのうしろにあった窓から、赤い日が差しこんでて、
そんなに長い時間寝たつもりはなかったんですけど。
あー夕方だ、そろそろ帰らなきゃって、ぼんやり立ち上がって、窓の外を見ると、
あのー、町が、燃えてたんですね。

そこかしこから、火とか煙が上がってて。
たくさんの飛行機が飛んで、たくさんの、黒いなにかを落としてました。
それが落ちたところから、また火が上がって、
火だるまになった人たちが家から飛び出して、のたうちまわってました。

そのころっていうと、ちょうど第三次世界大戦がはじまって1年ぐらいで、
少し前に、九州のほうで空襲があったってニュースは観てたんですけど、
なんか、申しわけないけど、こどものぼくには、全然リアリティがなくて、
親には、むやみに外を出歩くなとは言われてたんですけど……。
休むまもなく、今度はものすごく近くで爆撃の音がして、建物が一気にゆれました。
とにかく、やばいと思って、僕はあわててその部屋を出て、
階段で下へ降りようとしたんですけど、そこはもう、一面が火の海でした。
ぼくの友だちはみんな、床や、ベルトコンベアの上で、黒焦げになってました。
僕は下に降りることもできずに、またさっきの部屋にもどりました。
ここまで火の手が来るのは、時間の問題で、
たぶん、自分はここで死ぬんだなと思いました。
もう、パニクるでもなく、なんか、夢でも観ているような気持ちになってて、
ぼく、ぼんやり、窓の外の風景を観てたんですよ。
川の向こうのぼくらの町を見ると、大きなきのこ雲が地上から空に向かって浮かんでて、
そこは、まさに世界の終わりって感じで、
どう考えても、バッドエンドって感じでした。

そのとき、けむりの上がる空の中に、
切れ目みたいな横向きの線が、ならんで入ったんですよ。
はじめは、黒い飛行機雲かと思ったんですけど、
それがゆっくり、パカッと開いて、ふたつの大きな目玉が、地上を見下ろしたんですよ。

その瞬間、建物とか、車とか、人とか、なにもかも関係なく、
いろんなものがさらさらーって、砂みたいに形を失いはじめて、
空に浮かぶ、そのふたつの目玉に吸いこまれていったんですね。
その変化は、遠くのほうからだんだん近くまで来て、
僕がはりついている窓や壁も、だんだんと砂に変わり、
外にむき出しになったぼくの体も、指先から徐々に、砂に変わっていきました。
それはちょうど、あったかいお湯に浸かっていくような感覚で、
ぼくは、あっというまに全身砂になって、その目玉に吸いこまれて消えていきました。
それが、ぼくの、10歳の時の記憶。
ついさっきできたぼくの記憶の中に、たぶん、うっかり残ってしまった、
前回の2011年の、今日のできごとです。

今のこの世界がはじまって、もうすぐ20分たとうとしてます。
今も2011年なんで、一応、前回のつづきってことなんでしょうけど、
設定はちょっとちがう感じですけど。ぼくも今回は25歳になってるし。
まあ、もう、けっこうバッドエンドっぽい雰囲気がプンプンしてるんですけど、
どっかで見てるあの目玉のだれかにしてみたら、まだこれは、
アトラクションの域なのかもしれないですね。
こっち的にはたまったもんじゃないですけど。
今が何回目なのかわかんないですけど、
いつ終わってもふしぎじゃないような世界ですけど、
それでも、この中の登場人物であるぼくらにとっては、
20分前にはじまったここが、唯一の世界なんですよね。

だから、どうか、おぼえていてほしいんです。
どうもはじめまして、晴居彗星です、
名前と顔だけでもおぼえて帰ってください、
今のこの世界が存在しているうちに、
名前と顔だけでもおぼえて帰ってください、
ぼくだけじゃなくて、これから出会う人、
聴いた言葉、体験したこと、湧き上がった気持ち、
どうかほんの少しでもおぼえて帰ってください、
そうは言ってもわすれちゃうんでしょうけど、
いつかこの世界がバッドエンドになりそうになって、
また設定を変えてやり直しになったとしたら、
今の世界で笑ったことも、
今の世界でなやみ苦しんだことも、
今の世界に救われたことも、
今の世界であたりまえの日々をすごしていたことも、
きれいさっぱりわすれちゃうんでしょうけど、
あとかたもなくわすれちゃうんでしょうけど、
それでも、そのときが来るまで、ぼくらの世界は、ここですから。

5、4、3、2、1、まだ、世界はあります。
5、4、3、2、1、まだ、世界はあります。
5、4、3、2、1、まだ、世界は…………
posted by 晴居彗星 at 23:41| Comment(1) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月12日

最近のあれこれ

今朝、徹夜して超眠い……という夢を観た晴居彗星です。
なんのための睡眠だかわかりません。これほどまでに意味のない睡眠があるでしょうか。

例によってブログは思い出したかのように書いているわけですが。
ちなみに、前回アップした戯曲は、19歳のときに書いたものです。古い文書ファイルを漁っていたら見つけまして、活用する機会も特になさそうなので、こちらに載せた次第。別役実さん風ですね。ちょうどよく読んでいた時期だと思います。

現在、作業と作業の合間で、まあ読書したり映画観たりしているわけです。こちらで感想書いてないんですが、『ブラック・スワン』も『コクリコ坂から』も観ましたよ。『コクリコ坂から』、けっこうおもしろかったです。わりとよく動いていたし、武部聡志さんの音楽がすごく効果的だと思いました。今までのジブリ映画にあんまりなかったような要素が入っている感じで、新鮮でした。

アニメといえば、きのうは銀座松屋の大催事場で『ルパン三世展』を観に行きました。モンキー・パンチさんのマンガ原稿や、アニメの設定資料や原画などが展示されていて、なかなか見ごたえがありましたよ。ぼくはやっぱり、大塚康生さんのキャラクターデザインが好きですね。愛嬌があるというか。あと、テレビスペシャルのシリーズで言うと、わりと97年の『ワルサーP38』のデザインも好きですね。

と、まあ最近のことを思い出して書いているわけですが。あ、明日の21時ぐらいから、Ustreamでひとり生中継やる予定です。ぼくの部屋で、朗読したりしなかったりします。もろもろの詳細や当日のURLは、右側のブログパーツのTwitterを見ていただければと思います。

それにしても、こまめに書いてないと、ブログの書き方も忘れちゃいますね。以前は意味のないことでもサクサク書いていたものですが。ていうか、気がつけば、このブログももう4年やってるんですね。なんだかふしぎな感じです。
posted by 晴居彗星 at 22:13| Comment(1) | TrackBack(0) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月04日

JET POETで朗読したUst映像です

月曜日、JET POETに出演してきました。
なんとか、30分のステージをやってまいりました。
噛みまくりでした。すいません。

で、たまたまお店のWi-Fiが使えたので、当日、急遽Ustreamで、ぼくの朗読部分を生中継していたのです。
リアルタイムでご覧になった方は少ないと思いますが、録画保存してありますので、こちらに貼りつけておきます。
ぼくの前に読んでいたZULUさんの朗読の後半部分→ぼくの30分朗読→ブレイクタイムの雑談→オープンマイクトップバッターのあしゅりんさんの朗読、という流れになっております。まさかUstするとは思ってなかったので電源アダブタを持参しておらず、バッテリー電力のみだったので、この長さが限界ギリギリでした。

読んだのは4篇、『逆上がり』→『怪物』『ナギのこと』→『宇宙のブランコ』となっています。
もう一度いいますが、わたくし、カミカミでございます。
あと、ちょっと動画が重いかもしれません。

http://www.ustream.tv/recorded/16373084

Video streaming by Ustream

セットリストの展開と内容から、なんとなく「とあるサラリーマンの独白」みたいなイメージが出てきたので、それに合わせて、ネクタイなんぞをしてやってみました。

ちなみにバッテリーの都合で録画はされておりませんが、オーラスにもう一度ゲストが朗読をする時間のときには、『カイコ』をやりました。自分的には、これがいちばん出来がよかったです。しかし録画していないという。
posted by 晴居彗星 at 16:08| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月28日

戯曲『落とし物』

(ある路地。バッグを持った女1が歩いてくる)
(すぐ後から、男1が小走りでやってくる。女1を追いかけて来たようだ)

男1「あの、すいません」
女1「(振り返って)はい?」
男1「あの、これ。(と、手に持っていた物を差し出す)」
女1「は」
男1「(差し出す)」
女1「…なんですか?」
男1「いや、だから、これ」
女1「これが、なんなんですか」
男1「だから、落とし物です」
女1「はあ」

(間)

男1「いらないんですか」
女1「何をです」
男1「だから、これ」
女1「これって、落とし物なんでしょう?」
男1「そうですよ」
女1「落とし物は、落とした人の物じゃないんですか?」
男1「だって、あなたが落としたんですよ」
女1「……え?」
男1「あなたが」
女1「私が?」
男1「ええ」
女1「あの、私、そんな物落としてませんけど」
男1「いや、だって、…さっき、そこの曲がり角で、あなたのバッグからこれが」
女1「私のじゃありません」
男1「……あなたのバッグから、落ちたんですよ?」
女1「何かの間違いでしょう」
男1「間違えようがないですよ、だって……。僕、あなたのすぐ後ろ歩いてたんですから。目の前で見てたんですよ」
女1「私はそんな物持ってません」
男1「でも……」
女1「持ってない物を落とせるわけないじゃないですか」

(女2が歩いてくる)

男1「だけど、現にあなたの……」
女1「そんなはずありません」
男1「ありませんって言われても」
女1「なんなんですか、あなたは。からかってるんですか」
男1「そういうわけじゃ……」
女2「(女1に気付く)ケイコ?」
女1「(その声に振り向く)あれ、マリナ」
女2「どうしたの、こんなところで」
女1「ちょうど良かった、ねえ聞いてよ、この人が変な言いがかりつけてくるの」
男1「言いがかりじゃない!」
女2「どういうこと?」
女1「この人が、私がこれ落としたの拾ったから受け取れって言うの」
男1「実際に落としたじゃないですか、今さっき」
女1「だってそれ、私のじゃないし」
男1「なら、どうしてあなたのバッグからこれが?」
女1「そんなの知るわけないでしょ」
女2「(なだめるように)まあまあまあ。(男1に)あのう、この子もこう言ってることだし、別にいいじゃないですか、無理にそんな」
男1「だけど」
女2「誰にだって間違いはありますよ。ここはひとつ……」
男1「いや、間違いない。絶対に、この人が、これを落としたんです」
女1「落としてないって言ってるでしょ、しつこいなあ」
男1「なにぃ?」
女2「まあまあまあ……。どうしてそんなにこだわるんですか、たかが落とし物で」
男1「だって、どう考えておかしいじゃないですか」
女1「この人、きっと優越感に浸りたいんだ」
男1「はあ?」
女2「優越感?」
女1「落とし物を拾って親切にしてあげたっていう優越感。それが味わいたいからわざわざこんなことでっち上げて……」
男1「バカじゃないのか。わざわざそんなことするか」
女2「確かにね。わざわざそんなことする人いないと思う」
男1「当たり前だ」
女2「きっと、もっと深い理由があるんだよ」
男1「え?」
女1「どういうこと?」
女2「例えば、そうだな、これは実はこの人が誰かから盗んだ物で、でも足がつきそうになったから、警察に捕まらないうちにこれをケイコに渡して、ケイコを犯人に仕立て上げようとしてるとか」
男1「何を言ってるんです、あなたは」
女1「そうだ、きっとそれだよ! だからこんなにムキになって」
男1「いい加減にしろ! それ以上失礼なことを言うと」
女2「ホラ怒った。図星なんだきっと」
女1「ズバリ言い当てられて焦ってる」

(言い争っているところに、男2が通りかかる)

男1「誰だって怒りますよ。そんな、人の親切を踏みにじるような……」
女1「あ、やっぱり優越感?」
男1「そうじゃなくて!」
女2「とにかく、この人が泥棒なら、早く警察に連れて行った方が良くない?」

(男2、「泥棒」「警察」の言葉に反応し、立ち止まり、三人に体を向ける)

女2「だよね」
男1「だよねじゃない!」
男2「あの、すいません。今、泥棒だとか警察だとかいう言葉が聞こえたんですが」
女2「ええ。あなたは?」
男2「ああ、私、(懐から警察手帳を取り出し)こういう者です」
女2「刑事さん?」
男2「まあ、一応」
女1「ちょうど良かった、刑事さん、この人が……」
男1「待て、おい、ちょっと待て!」
男2「この人が何か?」
女1「泥棒なんです」
男1「違う!」
男2「泥棒……?」
男1「違う違う、違うんですよ全然」
女2「この人、自分の盗んだ物を人に押し付けて罪をなすりつけようとしてるんです」
男1「違いますよ刑事さん、僕の話を聞いてください」
女1「聞く必要なんかありませんよ」
男1「何だと?」
男2「まあまあ。私としてはあくまで、両方の意見を聞いて。(男1に)で、なんですか?」
男1「これは、確かにこの人が落とした物なんです。この人のバッグから落ちたのを見たから、それを拾って渡そうとしただけなんです。それなのに」
女1「でも私はそんなの持ってませんでした」
男1「と、まあ、こう言ってきかないと言うか……」
男2「ふうん、なるほどなるほど…。…ちょっと、(男1の手にある物を指して)見せてもらってもいいですかね、それ」

(男1、男2にその物を渡す)

男2「(しばらく見つめ、何かに気付く)ん…? これは。(手帳に書かれたメモと物を見比べて)間違いない、これは先日、ある資産家の屋敷から盗まれた物です」
男1「え?」
男2「冷酷な事件でした。資産家は惨殺、その家族も皆殺しにされ、屋敷の中の物という物、すべてが盗まれていました」
女1「ひどい……」
女2「(男1を指して)この人、この人がやったんだ!」
男1「ちょっと待て、違う! 刑事さん、(女1を指して)犯人はこの女です」
女1「え?」
男1「だってそうじゃないか、これはこの女のバッグから、……そうか、刑事さん、だからこいつはしらばっくれたんですよ。自分が落としたのに、自分のじゃないって」
女1「変な言いがかりはやめてよ!」
男1「そうとしか考えられないじゃないか!」
男2「まあ待ってください。ええっと、つまりは、どちらかが嘘をついているということになりますね。(女2に)あなたは現場は見てないんですか」
女2「現場?」
男2「ええ、だから、落としただの、落としてないだのの……」
女2「ああ、ええ、はい」
男2「つまり、特定する手がかりは何もない、ということですね」
男1「僕は嘘なんか言ってない!」
男2「しかし、嘘をついていると断って嘘をつく人もいませんから」
男1「そんな」
男2「とにかく、とりあえず二人とも署までご同行願えますか」
女1「やだ。私、絶対行かないから」
女2「ケイコ、ここは行っといた方がいいよ」
女1「大体、この人ホントに刑事なの?」
男2「はい?」
女2「何言ってんのケイコ? だって、さっき手帳を」
女1「けど、私本物の警察手帳なんて一度も見たことないし。『これが本物です』って言われたら信じるしかなくない?」
男1「確かに、昼間から私服の刑事がぶらぶら歩いてるなんて不自然だよなあ」
男2「私を疑っているんですか?」
女1「あなたが刑事だっていう証拠はあるんですか、手帳以外で」
男2「証拠っていわれても……」

(女3が歩いてくる)

男1「どこの警察署ですか」
男2「すぐそこです。ああ、署まで行けば私の同僚がいますよ、それで分かるでしょう」
女3「(男2を見て)あれ、オカダさんじゃない?」
男2「(気付き)え?」
女3「やっぱりそうだ、どうしたのこんなところで」
男2「あの、すいません、どちら様ですか?」
女3「やだ、何言ってるの、もう」
女2「(女3に)あの、この人知ってるんですか?」
女3「ええ、はい、同じ職場ですから」
男1「じゃあ、あなたも警察の人?」
女3「警察? 違いますよ、この近くの保険会社です」
男1「警察じゃないんですか?」
女3「ええ。どうして警察なんて……?」
男2「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。(女3に)あの、あなたは誰なんですか? 私はあなたのことを知りませんけど」
女3「何言ってるの、あなた、オカダさんでしょ?」
男2「いや、確かに私の名前はオカダですけど、あの、誰かと間違えてませんか、私は警察官で……」
女3「どうしたの一体?」
女1「(男2に)どうして嘘をつくんですか?」
男2「嘘じゃない、この方が間違えているんです」
女1「会社員なのに刑事のフリして、何が目的なんです?」
男2「目的も何も、私は刑事だ」
女3「あら。(と、男2の手にある例の物に気付き)ちょっと、それ見せて?(受け取る)あら、まあ……。オカダさん、これ、どこで?」
男2「は?」
女3「これは、十八世紀にイタリアで、…ああ、うまく言えないけど、あの、そうね、時価二千万はする物よ」
一同「ええ?」
男1「二千万?」
女3「ええ。私、そういうの詳しいの」
女2「すごい……」

(間)

男2「あのう、返してもらえませんか、それは重要な証拠でして」
女1「待ってください。それ、私のです」
男2「……は?」
女1「私がバッグから落としてしまったんです、返してください。(と、女2の手から奪い取る)」
男2「あなた、さっきはこんな物知らないと言ってたじゃないか!」
女1「そうでしたっけ?」
男1「いや、違いますよ。それは元々、僕が持っていたんです」
男2「え?」
女1「あなた、私が落としたって言ってたじゃない」
男1「しかしあなたはそれを否定した」
女1「さっきはね」
男1「あなたはそれは僕の物だと言った。だから僕の物です」
男2「ちょっと待ちなさい、さっきも言いましたが、これは強盗殺人事件の盗品ですよ。私はこれの持ち主を逮捕します」
女1「だってあなた、刑事じゃないんでしょ?」
男1「保険会社の人でしょう?」
男2「私は刑事です、何度言えば……」
女3「どうしてそんな嘘つくの、オカダさん」
男2「あなたは一体誰なんだ」
女3「どうしちゃったの、本当に」
男2「混乱させないで下さい、あなたは一体……(頭を抱える)」
男1「(女1に)とりあえずそれを返せよ」
女1「イヤ。だって私のだもん。私が落としたんだから私の」
男1「俺のだ」
女1「じゃあどうして私に渡そうとしたの」
女3「きっと、あなたが好きなのよ」
女1「はあ? 何それ」
男1「そうだ、あなたが好きだからだ」
女1「ふざけないでよ」
男1「愛してる」
女1「じゃあこれは私のものね」
男1「それとこれとは話が別だ」
女1「どっちなの」
男2「ちょっと静かにしてくれませんか! 何が何だか……」
女1「だって……」

(そのとき、女2、後ろから女1を刃物で刺す)
(女1、絶命する)
(女2、死んだ女1の手から、その物をそっと取り、それをじっと見つめる)

男2「あ、あなた……?」
女3「殺したの?」
男1「殺したのか?」
女2「え? ……ああ、死んでるね。でも、私が殺したんじゃないよ」

(間)

女2「私は殺してないもん。私じゃないよ。本当だよ?」

(ただ、風が吹いて……)

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2011年07月25日

8月1日「JET POET」の詳細コピペ

JET POET vol.44 〜即興の音楽と詩の朗読の宴〜
8月1日(月)@原宿JET ROBOT
http://www.jetrobot.com/live_cafe_jetrobot/main.html

OPEN 20:00 START 20:30
Charge: 1500円+1ドリンクオーダー(500円)

出演
朗読:
・晴居彗星
http://ilovegiotto.seesaa.net/

・ZULU
http://blog.goo.ne.jp/zulu19660509
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=2861855
http://www.facebook.com/ZULU.kinya.tsuruyama
http://www.youtube.com/user/kinyazulutsuruyama

演奏:
・タロー(baritone sax)
http://www.myspace.com/koutarouasano
http://mixi.jp/show_profile.pl?id=7372281

・志賀信夫(critic、t.sax、keyboard)
http://www.geocities.jp/butohart/
http://www.youtube.com/watch?v=oLF_rot_Sg4
twitter:http://twitter.com/butohart

・墨之江ユキ(vo.)
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3136770
http://music.geocities.jp/flower_doctor_otis/

☆当日エントリーのオープンマイク有
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2011年07月21日

8月1日(月)のJET POETに出演します

どうも、毎日暑いですが、寒いより圧倒的にマシなので普通に生きてます、晴居彗星です。

さて、最近はというと、津山から帰ってきたあとは、某仕事の仕上げ(まだ終わりじゃないけど)をヒーコラやっていました。うーん、某とか水面下とか、なんかモヤッとしかまだ言えないんですけどね。ただ、形になること自体は一応決定している仕事なので、まあ、いつかは告知できるかと思います。ぼくの新しいステップとなる仕事であります。乞うご期待! ということで。

で、こちらはもう告知できることなんですが、8月1日(月)に、原宿のJET ROBOTで行われる朗読イベント「JET POET」に、ゲストで出演いたします。これは舞踏家で詩の朗読活動も行っているZULUさんこと鶴山欣也さんが主催しているイベントで、即興演奏をバックに、ZULUさんとゲストがそれぞれ30分程度のステージをやり、オープンマイクもあるという内容です。ぼくは昨年の10月に一度ゲストで出てまして、今回は二度目の出演となります。なにをやるかは考え中です。20時OPEN、20時半STARTです。1500円+1ドリンク制です。予約をする必要はないので、そのまま当日ふらりとお越しください。

前回出演の模様はこちら(動画あり)
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2011年07月12日

『金のおれ、銀のおれ』

 おれは、森の中にある池のほとりで、木を倒そうと、斧をふるっていた。たき木にするためだ。
 力をこめて、斧を思いっきり振り上げたときだった。
スポーン!
 いきおいあまって、おれは、おれを池に落としてしまった。
 ブクブクブク……。
 すると、池の中から、光り輝く、美しい女神が現れた。
「あなたが落としたのは、この、金のおれですか? それとも、銀のおれですか?」
 女神の左右には、それぞれ金色に輝くおれと、銀色に輝くおれが、ぼんやりした表情で立っていた。
「……いえ、もっと、ふつうのおれです」
 と、言いたかったけど、言うべきおれは、もう池の底だった。
 しばらく経ってから、女神はにっこりとほほえんで、ひとりごとのように言った。
「あなたは正直者ですね。ほうびに、この、金のあなたと銀のあなた、ふたりとも差し上げましょう」
「いやいやいや、いらないです。それより、ふつうのおれを返してください」
 と、言いたかったけど、言うべきおれは、もう池の底だった。
 女神はそのまま、ブクブクと池の中にしずんでいってしまった。
 のこされたのは、金と銀のおれたちと、斧だけだった。
「どうするんだ」と、金のおれは言った。
「どうするんだ」と、銀のおれも言った。
 おれは、とほうにくれようとしたけど、とほうにくれるべきおれは、もう、いなくなっていた。
 金のおれと銀のおれは、斧をどちらが持って帰るか、大きな声でけんかをつづけていた。
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2011年06月18日

梅雨明けろー

14日にチャリティミニライブを行った志水住建さんのブログで、当日の模様を紹介していただきました。

何故、もこもこさんが浴衣なのかは僕にも謎です。なんか「このぐらいしないと!」的なことを言ってました。

当日は無料公演で、募金箱だけ設置していたのですが、集計すると金額が21200円となっておりました。僕が託されましたので、端数を足して23000円を被災地への義援金として、責任をもって日本赤十字社に寄付します。チャリティを基本軸としてのライブでしたので、野暮を承知でここで言明させて頂きました。改めてまして、当日ご来場くださったみなさま、ありがとうございました。とてもフレンドリーでやりやすいミニライブでした。

さて、現在は、一応次の仕事というかなんというかがあるので、それの打ち合わせに向けてのムニャムニャをやっておりますとともに、部屋の隅にうず高く積まれている積読を消化しています。消化という表現をするとアレですけど、いやいや、本を読むというのは実に楽しいことです。

まあ詩ボク前後からこっち、いろいろと活動をしていてつくづく感じるのですが、自分の方向性とかスタンスというものは、無理から作っていくというよりは、やっぱり自然と固まっていくものなんだなあと思いますね。ていうか、実践すれば実践するほど、自分に向いているものがわかってくるし、自分に何が足りないのかもわかってくるというか。僕も、10代後半の頃なんかは、頭の中であれこれ考えるだけでウンウン唸ってたりもしたけれど、やっぱり具体的に表出させること以上の勉強はないなあと。あのう、やっぱり頭の中だけだと、ある種の万能感というか、なんでもできるさ的な感覚があるわけだけど、それを実際に具体化すると、いろいろ気づくことがありますわね。で、その「気づき」こそが一番の鍛錬だと感じる昨今であります。
posted by 晴居彗星 at 22:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月15日

津山で朗読ライブやってきましたー

津山行ってきましたー。

今年も津山高専の1年生のみなさんに向けての課外授業の一環としての朗読ライブ、そして今回はそれとはべつに、前日の夜に、こぢんまりとしたミニライブを、僕にオファーをくれたMさんのご好意でやりました。

去年に引き続きもこもこさんとともに。名義としてちゃんと「しずくろん」で行ったのは初めてだったかな。ともかく、いずれもつつがなく終えることができました。ホッとしてます。

前日のミニライブは、こんな感じ。←撮っていただいた画像です。廃工場で半アウトドアな感じでやりまして、天気も良かったので気持ちよかったです。ゆるゆる、ビール飲みながら読むものを選んで行うような気楽なイベントで、楽しくやりました。

ほいで翌日のホールでのライブ。会場は例年と同じ場所で、こんな感じで。ステージしか写ってませんが、ホール自体は体育館ぐらいあるでかいとこです。こちらは僕的にも4年目でだいぶこのイベントの空気にも慣れまして、一応どういう感じになるかを考慮しながら、なるべく気楽に聴けるのとシリアスなのとの、長いのと短いのと配分を悩みつつ、即興もおりまぜつつセットリストを作りました。学生のみなさんもワイワイと活気のある感じで聴いてくれたので、とてもやりやすかったです! 1時間半のライブのあとはこれまた例年通り、学生のみなさんの朗読コンテストを審査して、こちらも面白く聴きました。晴居彗星賞を進呈した方の作品は密度が面白かったし、もこもこ賞の作品も、行間を読ませるシンプルな作品で良かったです。

そんなわけで、楽しい二日間でした。学生の皆さんは午前中に別の講演を聴いた後、午後にぼくらのライブという過密スケジュールだったようで、お疲れになったと思います。盛り上げていただいてありがとうございました。少しでも「おもしろかったかも」と思っていただけたなら、なによりです。
posted by 晴居彗星 at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月12日

もうすぐ津山

いやー、梅雨ですね。暑くなってきたのはもうね、あのう、全然構わないというか、カモンカモンという感じなんですが、雨はゲラウェイ!ってなもんでして、どうにかならんかなと思っておりますんですが。

もうずーーーっと前から言ってるんですが、Twitter始めてからブログの更新が、良くて月に数回といったレベルになってまして、それもたいがい告知か、思い出したかのように作品をpostするという使い方でして、まあ、それはそれでアリなんでしょうが、ついTwitterでつぶやくと、ブログを更新した程度の満足を得てしまうところがあって、よろしくないかなとも思います。前から「これからはブログのほうももっと書きます」と言いながら何度もちゃぶ台ひっくり返してるわけですが、でもね、個人的に言っても、ブログ横のカレンダーとか観て「うわー、少なっ!」「かつてはあんなに書いていたのに」と思えるぐらいには「Twitterに浮気してる感」がまだ自分の中にあるようなので、Twitterはつぶやき、ブログは作品postとコラムっぽいものと、ちゃんと双方やっていきたいなと、まあ思うだけは思うわけでありますがね。

ところでしずくろんですが、6月15日(水)に岡山県は津山市に行きまして、津山高専の学生さんを対象にした朗読ライブをやりまする。もうセットリストは決まってまして、いつもの感じでやりたいなと思ってます。ウケたらいいな。ていうかウケてね。

あと、その前日である14日(火)に、僕等を呼んでくださっているMさんのご好意で、ちょっとしたミニライブをやることになりました。会場となる志水住建さんのブログでもご紹介いただいておりますが、まあ、Mさんのお知り合いのみなさんを中心としたちょっとした親睦会みたいなものでして、夕方から30分程度朗読をして、その後は語りべの時間になると思います。

「しずくろん(晴居彗星&もこもこ)朗読ミニライブ」
日時:6月14日(火)18:00-
場所:岡山県津山市二宮 志水住建(廃)工場
朗読ライブ+簡単な軽食付き
一単位(家族)一品持ちよりいただけるとうれしいです。

すいません、ぼくも実はあまり正確な概要とかわかってなくてちゃんとした住所とかも知らないので「告知ってレベルじゃねーぞ!」という感じなんですけど、まあ、告知というよりかはこんなことやります程度のひとりごとだと思ってください。志水住建さんのブログに載ってたんで、こちらにも書こうかなと思った次第。もちろん、どなたもいらしてくださるぶんには全然ウェルカムだと思います。「ああ、あそこね!」と場所がわかって、僕やもこもこさんに興味がある方は、どうぞ。どのぐらいやるのかわかんないですけど、1時間半か2時間ぐらいはやってるんじゃないかと。特に参加費などは必要ないはずですが、ささやかながらチャリティ的な意図もあるので、主催さんのほうで募金は受け付けてくださるかと。マイクや音響なども使わず、シンプルにのんびり読みたいと思います。読むものはその場の雰囲気で決めるつもりです。

最近は僕ももこもこさんも、個人での活動も水面下でいろいろと行っておりまして、まあ、いい傾向かなと感じております。打ち合わせのスケジュールを合わせるのもいっぱいいっぱいなんですが、やることがあるのはいいことです。
posted by 晴居彗星 at 18:38| Comment(9) | TrackBack(0) | 独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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