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2011年07月12日

『金のおれ、銀のおれ』

 おれは、森の中にある池のほとりで、木を倒そうと、斧をふるっていた。たき木にするためだ。
 力をこめて、斧を思いっきり振り上げたときだった。
スポーン!
 いきおいあまって、おれは、おれを池に落としてしまった。
 ブクブクブク……。
 すると、池の中から、光り輝く、美しい女神が現れた。
「あなたが落としたのは、この、金のおれですか? それとも、銀のおれですか?」
 女神の左右には、それぞれ金色に輝くおれと、銀色に輝くおれが、ぼんやりした表情で立っていた。
「……いえ、もっと、ふつうのおれです」
 と、言いたかったけど、言うべきおれは、もう池の底だった。
 しばらく経ってから、女神はにっこりとほほえんで、ひとりごとのように言った。
「あなたは正直者ですね。ほうびに、この、金のあなたと銀のあなた、ふたりとも差し上げましょう」
「いやいやいや、いらないです。それより、ふつうのおれを返してください」
 と、言いたかったけど、言うべきおれは、もう池の底だった。
 女神はそのまま、ブクブクと池の中にしずんでいってしまった。
 のこされたのは、金と銀のおれたちと、斧だけだった。
「どうするんだ」と、金のおれは言った。
「どうするんだ」と、銀のおれも言った。
 おれは、とほうにくれようとしたけど、とほうにくれるべきおれは、もう、いなくなっていた。
 金のおれと銀のおれは、斧をどちらが持って帰るか、大きな声でけんかをつづけていた。
posted by 晴居彗星 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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