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2009年03月21日

デトックスへの懐疑(田上パル『改造☆人間』)

先日の水曜日、こまばアゴラ劇場で田上パル第6回公演『改造☆人間』(作・演出:田上豊)を観劇。

体の中の毒を抜いてスッキリした人間に生まれ変わろうという山奥のデトックス道場が舞台。そこで日夜断食や鍛錬に励む道場主と門下生たち、かつてそこにいた元門下生に無理矢理連れてこられた女の子たち、デトックス道場だと知らずに、道場破りのつもりが門下生となってしまった師範代を探しにやってきた普通の道場の門下生などが入り乱れるハイテンションな芝居。

こんなに体力の要る観劇は久しぶりである。なにしろ熱量が尋常じゃない。熊本弁で吠えながら、舞台を跳ぶわ走るわ飛び降りるわ。第一、道場の入口が、舞台下手上方にある穴で、その位置はゆうに大人の身長分ぐらいの高さなのだ。内容はいわゆるドタバタで、シチュエーションコメディでよく用いられる「過剰な人の出入り」「情報の差による勘違い」「ディスカッション」などの手法が、高密度のテンションと破壊力で繰り返され、いささかねちっこく、進行が遅く感じられて苛々してくるほどであった。

とにかく尋常じゃないほどテンションが高いので、どの場面を取っても血管が切れそうになる。特に、主人公格の門下生が、みんなの勘違いによって破門される場面は圧巻。声帯が破れるんじゃないかというぐらいの絶叫と嗚咽で、演技と思えぬほどのガチの「キレた怒り」がそこにあった。

通常、この手の物語にはパターンがある。つまり「非日常な場所」や「非日常を送っている人々」がいて、そこにいわゆる「普通の人々」が投入される。最初のうち「普通の人々」は当然のように反発するも、やがてその「非日常」に溶け込んでいき、それを体感していくうちに、新しい自分に成長する、というものだ。ちょっと上手い例が思いつかないのでアレだが、たとえば映画の『深呼吸の必要』などが微妙にこれに該当するかな(ちょっと違うかもしれない)。
しかし、この芝居はもっとしたたかである。「非日常な場所=デトックス道場」があり、「非日常な人々=門下生」がいて、彼らが通常ではありえないような狂態じみた生活をしている中に、「普通の人々=女の子たちなど」がやってくる。そこまではフォーマット通り。その導入部の時点では、僕なんかは先述のパターンが頭にあるから、デトックス道場から必死に逃げ出そうと画策する女の子たちに対しむしろ「どうせお前らそのうちここに馴染む展開になるんだからウダウダすんな」ぐらいに思うわけだ。
だがこの芝居では、この「非日常な場所」そのものに破綻が生じる。確かに女の子のうちのひとりが、この「非日常な人々」の一員になるという展開もあるのだが、しかしその反面、非日常が非日常であるということに門下生たちが自覚的になっていき、やがて道場主が反デトックスであるというどんでん返しに至る。そのときには、完全に登場人物達の心情はバラバラになっている。みんなして道場主をやっつけるという山場はあるものの、それはまさに物語展開上の「山場」でしかなく、最終的には、なんとみんなそれらのバラバラな思いをそのままに道場を去っていくという、フォーマットとは真逆のラストを迎えるのだ。日常からやってきた女の子たちも、最後まで「こいつらおかしい」と思ったままそこを後にする。つまりほとんど通常パターンと逆転しており、従ってカタルシスも無く、観客は登場人物達と共にモヤモヤした気持ちを抱えたまま、観劇を終えることとなる。

つまりこれは、デトックスというものを扱いながら、見る者にデトックスさせないという、相当にしたたかな演出なのだ。デトックスによって違う人間に生まれ変わるというのは本当なのか。本当だとして、それは良いことと言えるのだろうか。そんなクエスチョンを、そのまま提示したこの作品は、狙い通りの成功を収めたと言えるだろう。
posted by 晴居彗星 at 20:09| Comment(1) | TrackBack(0) | 演劇鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こうすけ、コメントありがとう。
応援メッセージ、どうもです。

一部、僕の個人情報が流出してたんで消しちゃいましたけど(笑)。めんご。
Posted by すいせー at 2009年03月23日 05:57
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