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2009年02月11日

NODA・MAP『パイパー』観ました

シアターコクーンで、NODA・MAPの第14回公演『パイパー』(作・演出:野田秀樹)を観てまいりました。いやー、並びましたよー、当日券。何しろ、18時にチケット発売のところを、15時から並びましたからね、3番目ぐらいでした。その甲斐あって、S席ゲットしましたよ。コクーンシートでも良かったんですが、まあ、たまにはこのぐらいの奮発もいいかと。

既に『新潮』で戯曲が発表されていたのは知ってたんですが、我慢して読まずにおいたんで、サイトや雑誌で紹介されているイントロダクション以上の予備知識を持たずに今日観ました。

地球から人類が移住した1000年後の火星の、かなり長い歴史がザクザク切って描かれるので、ちょうど歴史年表の重要トピックを見ていくような感じ。「何故火星はこんなに荒廃してしまったのか?」ということを、人々の亡骸の欠片であるところの「おはじき」に眠る記憶から読み解いていくという一種の謎解きであるけれども、結構、系統立て過ぎて捉えようとすると置いていかれるような、かなり感覚的なジャンプの仕方をしている展開が随所にあって、そういうのはちょうど『ギリシャ神話』や『古事記』を読んでいて「え、そこ途中はどういうことになっとんのよ」と突っ込もうと一瞬思うけどでもそれはヤボやなと思い直すのと同じようにして観た。今回かなりコロスが登場していて、それはたとえば中盤における民衆の混乱や死屍累々に迫力を与えている。迫力を与えるのは台詞の情報量についても同じで、開幕冒頭から「だいぶ飛ばすなー」とやや引き気味に感じるほど台詞が多かったのだけれども、クライマックスの火星を彷徨う母子のシーンにおいては、見た風景をいささか過剰すぎるほどの言葉の応酬によって表現することで、そのカオスを脳裏に焼き付ける効果を発揮。

タイトルにもなっている「パイパー」とは、人類と共に火星に来た、幸福値を測る機械だか生物だかよく分からないものなのだけれども、これも論理的にではなく、シンボリックな存在として抽象的に捉えた方が観やすい。それらが測定した幸福度をダイレクトにデジタル数字として舞台で見せる(これは数値化社会への風刺と嫌が応にも直結するわけだが)というわかりやすさから後半、次第に窮乏に向かうことで幸福の数値としての測定が意味を成さなくなった火星において、今度は破壊の象徴に見えてくるパイパーが亡骸の運び屋になることの意味が、終末世界に置いて生きること=喰うこととして生々しく描き出される。

松たか子と宮沢りえ、先述の母子の言葉の応酬が見事。橋爪功は何しろクライマックスの怪演が凄い。大倉孝二、進行役を担いながら面白キャラ。野田さん、演説シーンはさすがだけど、思ったよりも出番少なくてちょい残念。コンドルズの「パイパー」の演技、どういうことになってんのか観劇前は予想もつかんかったけど、意外とストレートにそのまんまでやってて、最初笑ったけど、破壊していくあたり、見入った。

一大叙事詩であり、連続性のある歴史を描いているのだけれども、それらは人々の記憶から見る「回想」として描かれており、だからなのかもしれないけど、ひとつひとつのエピソードがドラマというより一枚絵のように感じられて、それがまた雑多なぐらいいろんな要素を孕んでいる。だからあまり整合性を求めずに、それらの乱反射を楽しみながら観念的に見た方が面白いように思えた。かと思えば、終わり方なんか、ちょっと臭いんじゃないかというぐらいステレオタイプだったりもするんだけど。まあ、神話って突き詰めるとそうなるのかもな。

ともかく、面白かったですよ。でも、どう面白いのかと聞かれると、ちょっと説明しにくい。観劇後、なんだかモヤモヤしたものが残ったりもしたんだが、そのぐらい、いろんな要素が詰め込まれていたんだ。これを「入れ過ぎだ」と言うのは簡単だが、でも、すべてを論理的に整合性を持ってまとめたとして、そこに魅力が生まれるかと思うと、ちょっと怪しい気がする。何でもかんでも回収し過ぎて、逆に世界が矮小化してしまうこともあるのだ。だから、やはりこのモヤモヤは、この芝居を堪能した僕の、数値化出来ない幸福感なのだと思うのだ。
posted by 晴居彗星 at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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