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2011年07月28日

戯曲『落とし物』

(ある路地。バッグを持った女1が歩いてくる)
(すぐ後から、男1が小走りでやってくる。女1を追いかけて来たようだ)

男1「あの、すいません」
女1「(振り返って)はい?」
男1「あの、これ。(と、手に持っていた物を差し出す)」
女1「は」
男1「(差し出す)」
女1「…なんですか?」
男1「いや、だから、これ」
女1「これが、なんなんですか」
男1「だから、落とし物です」
女1「はあ」

(間)

男1「いらないんですか」
女1「何をです」
男1「だから、これ」
女1「これって、落とし物なんでしょう?」
男1「そうですよ」
女1「落とし物は、落とした人の物じゃないんですか?」
男1「だって、あなたが落としたんですよ」
女1「……え?」
男1「あなたが」
女1「私が?」
男1「ええ」
女1「あの、私、そんな物落としてませんけど」
男1「いや、だって、…さっき、そこの曲がり角で、あなたのバッグからこれが」
女1「私のじゃありません」
男1「……あなたのバッグから、落ちたんですよ?」
女1「何かの間違いでしょう」
男1「間違えようがないですよ、だって……。僕、あなたのすぐ後ろ歩いてたんですから。目の前で見てたんですよ」
女1「私はそんな物持ってません」
男1「でも……」
女1「持ってない物を落とせるわけないじゃないですか」

(女2が歩いてくる)

男1「だけど、現にあなたの……」
女1「そんなはずありません」
男1「ありませんって言われても」
女1「なんなんですか、あなたは。からかってるんですか」
男1「そういうわけじゃ……」
女2「(女1に気付く)ケイコ?」
女1「(その声に振り向く)あれ、マリナ」
女2「どうしたの、こんなところで」
女1「ちょうど良かった、ねえ聞いてよ、この人が変な言いがかりつけてくるの」
男1「言いがかりじゃない!」
女2「どういうこと?」
女1「この人が、私がこれ落としたの拾ったから受け取れって言うの」
男1「実際に落としたじゃないですか、今さっき」
女1「だってそれ、私のじゃないし」
男1「なら、どうしてあなたのバッグからこれが?」
女1「そんなの知るわけないでしょ」
女2「(なだめるように)まあまあまあ。(男1に)あのう、この子もこう言ってることだし、別にいいじゃないですか、無理にそんな」
男1「だけど」
女2「誰にだって間違いはありますよ。ここはひとつ……」
男1「いや、間違いない。絶対に、この人が、これを落としたんです」
女1「落としてないって言ってるでしょ、しつこいなあ」
男1「なにぃ?」
女2「まあまあまあ……。どうしてそんなにこだわるんですか、たかが落とし物で」
男1「だって、どう考えておかしいじゃないですか」
女1「この人、きっと優越感に浸りたいんだ」
男1「はあ?」
女2「優越感?」
女1「落とし物を拾って親切にしてあげたっていう優越感。それが味わいたいからわざわざこんなことでっち上げて……」
男1「バカじゃないのか。わざわざそんなことするか」
女2「確かにね。わざわざそんなことする人いないと思う」
男1「当たり前だ」
女2「きっと、もっと深い理由があるんだよ」
男1「え?」
女1「どういうこと?」
女2「例えば、そうだな、これは実はこの人が誰かから盗んだ物で、でも足がつきそうになったから、警察に捕まらないうちにこれをケイコに渡して、ケイコを犯人に仕立て上げようとしてるとか」
男1「何を言ってるんです、あなたは」
女1「そうだ、きっとそれだよ! だからこんなにムキになって」
男1「いい加減にしろ! それ以上失礼なことを言うと」
女2「ホラ怒った。図星なんだきっと」
女1「ズバリ言い当てられて焦ってる」

(言い争っているところに、男2が通りかかる)

男1「誰だって怒りますよ。そんな、人の親切を踏みにじるような……」
女1「あ、やっぱり優越感?」
男1「そうじゃなくて!」
女2「とにかく、この人が泥棒なら、早く警察に連れて行った方が良くない?」

(男2、「泥棒」「警察」の言葉に反応し、立ち止まり、三人に体を向ける)

女2「だよね」
男1「だよねじゃない!」
男2「あの、すいません。今、泥棒だとか警察だとかいう言葉が聞こえたんですが」
女2「ええ。あなたは?」
男2「ああ、私、(懐から警察手帳を取り出し)こういう者です」
女2「刑事さん?」
男2「まあ、一応」
女1「ちょうど良かった、刑事さん、この人が……」
男1「待て、おい、ちょっと待て!」
男2「この人が何か?」
女1「泥棒なんです」
男1「違う!」
男2「泥棒……?」
男1「違う違う、違うんですよ全然」
女2「この人、自分の盗んだ物を人に押し付けて罪をなすりつけようとしてるんです」
男1「違いますよ刑事さん、僕の話を聞いてください」
女1「聞く必要なんかありませんよ」
男1「何だと?」
男2「まあまあ。私としてはあくまで、両方の意見を聞いて。(男1に)で、なんですか?」
男1「これは、確かにこの人が落とした物なんです。この人のバッグから落ちたのを見たから、それを拾って渡そうとしただけなんです。それなのに」
女1「でも私はそんなの持ってませんでした」
男1「と、まあ、こう言ってきかないと言うか……」
男2「ふうん、なるほどなるほど…。…ちょっと、(男1の手にある物を指して)見せてもらってもいいですかね、それ」

(男1、男2にその物を渡す)

男2「(しばらく見つめ、何かに気付く)ん…? これは。(手帳に書かれたメモと物を見比べて)間違いない、これは先日、ある資産家の屋敷から盗まれた物です」
男1「え?」
男2「冷酷な事件でした。資産家は惨殺、その家族も皆殺しにされ、屋敷の中の物という物、すべてが盗まれていました」
女1「ひどい……」
女2「(男1を指して)この人、この人がやったんだ!」
男1「ちょっと待て、違う! 刑事さん、(女1を指して)犯人はこの女です」
女1「え?」
男1「だってそうじゃないか、これはこの女のバッグから、……そうか、刑事さん、だからこいつはしらばっくれたんですよ。自分が落としたのに、自分のじゃないって」
女1「変な言いがかりはやめてよ!」
男1「そうとしか考えられないじゃないか!」
男2「まあ待ってください。ええっと、つまりは、どちらかが嘘をついているということになりますね。(女2に)あなたは現場は見てないんですか」
女2「現場?」
男2「ええ、だから、落としただの、落としてないだのの……」
女2「ああ、ええ、はい」
男2「つまり、特定する手がかりは何もない、ということですね」
男1「僕は嘘なんか言ってない!」
男2「しかし、嘘をついていると断って嘘をつく人もいませんから」
男1「そんな」
男2「とにかく、とりあえず二人とも署までご同行願えますか」
女1「やだ。私、絶対行かないから」
女2「ケイコ、ここは行っといた方がいいよ」
女1「大体、この人ホントに刑事なの?」
男2「はい?」
女2「何言ってんのケイコ? だって、さっき手帳を」
女1「けど、私本物の警察手帳なんて一度も見たことないし。『これが本物です』って言われたら信じるしかなくない?」
男1「確かに、昼間から私服の刑事がぶらぶら歩いてるなんて不自然だよなあ」
男2「私を疑っているんですか?」
女1「あなたが刑事だっていう証拠はあるんですか、手帳以外で」
男2「証拠っていわれても……」

(女3が歩いてくる)

男1「どこの警察署ですか」
男2「すぐそこです。ああ、署まで行けば私の同僚がいますよ、それで分かるでしょう」
女3「(男2を見て)あれ、オカダさんじゃない?」
男2「(気付き)え?」
女3「やっぱりそうだ、どうしたのこんなところで」
男2「あの、すいません、どちら様ですか?」
女3「やだ、何言ってるの、もう」
女2「(女3に)あの、この人知ってるんですか?」
女3「ええ、はい、同じ職場ですから」
男1「じゃあ、あなたも警察の人?」
女3「警察? 違いますよ、この近くの保険会社です」
男1「警察じゃないんですか?」
女3「ええ。どうして警察なんて……?」
男2「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。(女3に)あの、あなたは誰なんですか? 私はあなたのことを知りませんけど」
女3「何言ってるの、あなた、オカダさんでしょ?」
男2「いや、確かに私の名前はオカダですけど、あの、誰かと間違えてませんか、私は警察官で……」
女3「どうしたの一体?」
女1「(男2に)どうして嘘をつくんですか?」
男2「嘘じゃない、この方が間違えているんです」
女1「会社員なのに刑事のフリして、何が目的なんです?」
男2「目的も何も、私は刑事だ」
女3「あら。(と、男2の手にある例の物に気付き)ちょっと、それ見せて?(受け取る)あら、まあ……。オカダさん、これ、どこで?」
男2「は?」
女3「これは、十八世紀にイタリアで、…ああ、うまく言えないけど、あの、そうね、時価二千万はする物よ」
一同「ええ?」
男1「二千万?」
女3「ええ。私、そういうの詳しいの」
女2「すごい……」

(間)

男2「あのう、返してもらえませんか、それは重要な証拠でして」
女1「待ってください。それ、私のです」
男2「……は?」
女1「私がバッグから落としてしまったんです、返してください。(と、女2の手から奪い取る)」
男2「あなた、さっきはこんな物知らないと言ってたじゃないか!」
女1「そうでしたっけ?」
男1「いや、違いますよ。それは元々、僕が持っていたんです」
男2「え?」
女1「あなた、私が落としたって言ってたじゃない」
男1「しかしあなたはそれを否定した」
女1「さっきはね」
男1「あなたはそれは僕の物だと言った。だから僕の物です」
男2「ちょっと待ちなさい、さっきも言いましたが、これは強盗殺人事件の盗品ですよ。私はこれの持ち主を逮捕します」
女1「だってあなた、刑事じゃないんでしょ?」
男1「保険会社の人でしょう?」
男2「私は刑事です、何度言えば……」
女3「どうしてそんな嘘つくの、オカダさん」
男2「あなたは一体誰なんだ」
女3「どうしちゃったの、本当に」
男2「混乱させないで下さい、あなたは一体……(頭を抱える)」
男1「(女1に)とりあえずそれを返せよ」
女1「イヤ。だって私のだもん。私が落としたんだから私の」
男1「俺のだ」
女1「じゃあどうして私に渡そうとしたの」
女3「きっと、あなたが好きなのよ」
女1「はあ? 何それ」
男1「そうだ、あなたが好きだからだ」
女1「ふざけないでよ」
男1「愛してる」
女1「じゃあこれは私のものね」
男1「それとこれとは話が別だ」
女1「どっちなの」
男2「ちょっと静かにしてくれませんか! 何が何だか……」
女1「だって……」

(そのとき、女2、後ろから女1を刃物で刺す)
(女1、絶命する)
(女2、死んだ女1の手から、その物をそっと取り、それをじっと見つめる)

男2「あ、あなた……?」
女3「殺したの?」
男1「殺したのか?」
女2「え? ……ああ、死んでるね。でも、私が殺したんじゃないよ」

(間)

女2「私は殺してないもん。私じゃないよ。本当だよ?」

(ただ、風が吹いて……)

posted by 晴居彗星 at 19:49| Comment(1) | TrackBack(0) | 戯曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月25日

8月1日「JET POET」の詳細コピペ

JET POET vol.44 〜即興の音楽と詩の朗読の宴〜
8月1日(月)@原宿JET ROBOT
http://www.jetrobot.com/live_cafe_jetrobot/main.html

OPEN 20:00 START 20:30
Charge: 1500円+1ドリンクオーダー(500円)

出演
朗読:
・晴居彗星
http://ilovegiotto.seesaa.net/

・ZULU
http://blog.goo.ne.jp/zulu19660509
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=2861855
http://www.facebook.com/ZULU.kinya.tsuruyama
http://www.youtube.com/user/kinyazulutsuruyama

演奏:
・タロー(baritone sax)
http://www.myspace.com/koutarouasano
http://mixi.jp/show_profile.pl?id=7372281

・志賀信夫(critic、t.sax、keyboard)
http://www.geocities.jp/butohart/
http://www.youtube.com/watch?v=oLF_rot_Sg4
twitter:http://twitter.com/butohart

・墨之江ユキ(vo.)
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3136770
http://music.geocities.jp/flower_doctor_otis/

☆当日エントリーのオープンマイク有
posted by 晴居彗星 at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 宣伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月21日

8月1日(月)のJET POETに出演します

どうも、毎日暑いですが、寒いより圧倒的にマシなので普通に生きてます、晴居彗星です。

さて、最近はというと、津山から帰ってきたあとは、某仕事の仕上げ(まだ終わりじゃないけど)をヒーコラやっていました。うーん、某とか水面下とか、なんかモヤッとしかまだ言えないんですけどね。ただ、形になること自体は一応決定している仕事なので、まあ、いつかは告知できるかと思います。ぼくの新しいステップとなる仕事であります。乞うご期待! ということで。

で、こちらはもう告知できることなんですが、8月1日(月)に、原宿のJET ROBOTで行われる朗読イベント「JET POET」に、ゲストで出演いたします。これは舞踏家で詩の朗読活動も行っているZULUさんこと鶴山欣也さんが主催しているイベントで、即興演奏をバックに、ZULUさんとゲストがそれぞれ30分程度のステージをやり、オープンマイクもあるという内容です。ぼくは昨年の10月に一度ゲストで出てまして、今回は二度目の出演となります。なにをやるかは考え中です。20時OPEN、20時半STARTです。1500円+1ドリンク制です。予約をする必要はないので、そのまま当日ふらりとお越しください。

前回出演の模様はこちら(動画あり)
posted by 晴居彗星 at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 宣伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月12日

『金のおれ、銀のおれ』

 おれは、森の中にある池のほとりで、木を倒そうと、斧をふるっていた。たき木にするためだ。
 力をこめて、斧を思いっきり振り上げたときだった。
スポーン!
 いきおいあまって、おれは、おれを池に落としてしまった。
 ブクブクブク……。
 すると、池の中から、光り輝く、美しい女神が現れた。
「あなたが落としたのは、この、金のおれですか? それとも、銀のおれですか?」
 女神の左右には、それぞれ金色に輝くおれと、銀色に輝くおれが、ぼんやりした表情で立っていた。
「……いえ、もっと、ふつうのおれです」
 と、言いたかったけど、言うべきおれは、もう池の底だった。
 しばらく経ってから、女神はにっこりとほほえんで、ひとりごとのように言った。
「あなたは正直者ですね。ほうびに、この、金のあなたと銀のあなた、ふたりとも差し上げましょう」
「いやいやいや、いらないです。それより、ふつうのおれを返してください」
 と、言いたかったけど、言うべきおれは、もう池の底だった。
 女神はそのまま、ブクブクと池の中にしずんでいってしまった。
 のこされたのは、金と銀のおれたちと、斧だけだった。
「どうするんだ」と、金のおれは言った。
「どうするんだ」と、銀のおれも言った。
 おれは、とほうにくれようとしたけど、とほうにくれるべきおれは、もう、いなくなっていた。
 金のおれと銀のおれは、斧をどちらが持って帰るか、大きな声でけんかをつづけていた。
posted by 晴居彗星 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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